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税務の勘所Vital Point of Tax

賃貸併用住宅の屋外給水設備 償却資産の按分めぐりバトル

2021/11/24

 固定資産税の課税対象となる償却資産に該当するかどうか、戸惑うケースは少なくない。納税者としては、できるだけ負担は軽いほうがよいが、なかなか上手くいかないこともあるようだ。たとえば、減価償却費を必要経費とする賃貸併用住宅の資産について、自宅用と賃貸用とに分けられる場合、課税対象を賃貸部分だけに限ることはできるかどうかで争った事例がある(東京都令和3年4月22日)。

 裁決書によると、所有するマンション7部屋のうち2部屋を自宅、残り5部屋を賃貸していた納税者は、償却資産として冷暖房工事に基づく設備では、自家用と賃貸用の台数で全体額を按分して計上していた。納税者は、さらに屋外給水工事に基づく設備についてもメーターから各戸ごとに配管されているので、配管数で按分して賃貸分のみ課税することが可能ではないかと考え、令和元年7月、償却資産の評価に対する審査の申出とともに、課税の取消しを争う審査請求をした。

 固定資産税のかかる償却資産とは「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)で、その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの」とされている(地方税法341条、342条)。つまり賃貸部分については、所得税で減価償却費を必要経費に算入しているため償却資産になるが、償却資産に自宅用も含まれているなら排除したいというわけだ。しかし、東京都の行政不服審査会は答申において次のように審理した。

 ①法令等において、一つの償却資産が事業用と自家用に併用されている場合に按分して税額を算出するような規定はない。
 ②冷暖房工事は、賃貸の用に供されている台数分のエアコンを記載したものであるところ、工事明細書の内訳上、自宅用・賃貸用のエアコン台数が別々に記載されていたこと、エアコンが壁掛け型であり、一台ごとに一つの償却資産として評価することが可能であることから、賃貸用に供されている台数分について課税している 。 
 ③屋外給水工事は、水道本管から1本の引込管で本件建物に引き込んだ上で、7部屋それぞれに設置されたメーターボックスの手前で分岐するように配管されており、一体の工事として施されたものであるため、一部を切り離して評価することはできない。その他の本件各償却資産についても、それぞれが一体の工事として施された一つの償却資産であるところ、一つの償却資産の一部だけに対し課税することはできない。


 東京都はこの答申を受けて、納税者の請求を棄却している。

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